今回は、平成28年度の今後の介護老人保健施設の事業運営として、神奈川県社会福祉協議会政策提言委員会に取り上げていただいた内容について紹介します。
まずは、平成27年度介護保険制度の改定において、地域包括ケアシステムの構築に向けて、在宅医療・介護連携の推進、認知症施策など地域支援事業の充実を図る。予防給付(訪問介護、通所介護)を地域支援事業に移行し、「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」として原則、平成29年4月までに全市町村が実施することになっている。そこで現状として、
①地域完結型のケア実現に向けて、家族の理解や家族を取り巻く環境にも違いがあり、行政、医療関係者、福祉関係者など多様な担い手が連携していかなければ地域包括ケアシステムは構築できないが、それぞれが独自に取り組んでおり全体的な連携や調整は未だ途上にある。特に、地域包括ケアシステムとして、高齢者の在宅生活を支えるうえでは、介護に関する家族の負担をどのように軽減していくか、また生活保護世帯や家族のいない単身者などの高齢期の在宅生活をどのように支えていくかも大きな課題となっている。特に保護世帯の利用者を受け入れることによる経営の悪化が問題となっている。
②大都市圏ではこの先10年で急速に後期高齢者人口が増加することが予測されており、県民の健康長寿の増進、社会参加の促進に繋がる、高齢者の集うサロン的な居場所が多数必要になるのではないか。また、後期高齢者の増加に伴い、介護職・看護職が更に増員が必要となることが予測されている。
③補足給付(食事代)の取り扱いについて、4段階の人が3段階以下の人たちの食事代を補填する仕組みとなっている。この点に違和感がある。老人保健施設の役割ですが、現状、地域包括ケアシステムにおける老健の役割や位置づけが不明確である。
このような現状及び課題から、
①地域包括ケアシステムの構築に向けて、特に、中・重度の方の在宅生活を支えていくためには、介護老人保健施設の役割は重要であるが、医療機関や医師会、市区町村社協や民生委員などの地域で活動する方々との連携については、まだ途上にある。地域包括ケアシステムを構築するためには、市区町村などの身近な単位での連携を進めることが不可欠であるため、行政のイニシアチブによって、市区町村社協などとも協力しあいながら、介護老人保健施設を含めた連携の場を創設していただきたい。既にそうした場を持っている市町村についても、更に具体的な連携が進められるように工夫を高めていただきたい。
②処遇改善に向けた取り組みの推進をしていただきたい。また介護職について魅力ある仕事として評価・選択されるようイメージ向上に繋がるポジティブな情報の発信をしていただきたい。
③補足給付に関わる食事代の見直しが必要。現状にあった金額にして欲しい。
以上、2025年度の将来像も含めた政策提言内容について紹介させていただきました。
また、在宅医療・介護連携の推進については、それぞれの市町村で、さまざまな取り組みが行われているはずだが、まだまだ見えてこないのが実情である。私も県西地区地域包括ケア会議の委員を務め、また湯河原町在宅療養・介護連携委員会に参加しているものの、具体的なイメージが捉えられないのが現状である。市町村は、国が示している在宅医療・介護連携の推進における8つの項目を計画し実行するイニシアチブを取ってもらわないと困るのですが。
ア 地域の医療・介護の資源の把握
イ 在宅医療・介護連携の課題の抽出と対応策の検討
ウ 切れ目のない在宅医療と介護の提供体制の構築
エ 医療・介護関係者の情報共有の支援
オ 在宅医療・介護連携に関する相談
カ 医療・介護関係者の研修談支援
キ 地域住民への普及啓発
ク 在宅医療・介護連携に関する関係市区町村の連携
ニューライフ湯河原 事務長 松岡秀典